■ はじめに
近年、自治体の“財政の見える化”に取り組む自治体が増えています。
予算書や決算書はかつて専門家しか読めない「ブラックボックス」でしたが、住民が自治に参加する時代には、財政情報の透明性と分かりやすさが欠かせません。
本稿では、見える化の進捗状況と取り組み事例、そしてその先にある住民参画の可能性を読み解きます。
■ 財政情報の公開は進んでいるか?
◯ 自治体の情報公開は制度としては整備済み
総務省によると、全ての市区町村で予算・決算のPDF公開が完了(2023年度)
しかし内容は「難解な表形式」「専門用語の羅列」で、住民の理解には大きなハードル
◯ “見える化”は一部先進自治体にとどまる
総務省の「自治体戦略2040構想研究会」では、「グラフィカルな見せ方」「対話型ツール」の導入が有効とされているが、実装自治体は全体の2割未満
■ 住民の「財政リテラシー」とは何か?
財政を理解するとは、「どこに、いくら、なぜ使われているか」を知ること
これは、行政批判ではなく、“まちづくりを自分ごとにする”入り口
例:
「小中学校の空調更新に5,000万円」→ 高すぎる?それとも将来への投資?
「地域包括支援センターに年間2,000万円」→ 介護予防と財政効率の関係性は?
■ 先進事例に学ぶ「伝える技術」
◎ 愛知県新城市
「グラフで見る予算書」を作成し、市の歳出をアイコン付きチャートで可視化
市民ワークショップで意見を募り、予算の優先度を話し合う機会に活用
◎ 長野県飯田市
Web上で使える「市民のための財政シミュレーションツール」を公開
子育て政策を拡充した場合の財政への影響などを市民自身が“試算”できる仕組み
■ 課題と今後の展望
【課題】 【解決の方向性】
・情報が難しすぎる → インフォグラフィックス/動画での解説/多言語対応
・見ても参加できない → 財政ワークショップ、パブリックコメントの可視化と結果共有
・担当部署の負担感 → 自動化ツール・広報部門との連携・民間連携の活用
■ おわりに
財政の“見える化”は、単なる広報ではなく、自治体と住民がまちを一緒につくるための出発点です。
そしてこれは、行政の説明責任を果たすだけでなく、市民が意思決定に関与する力を育てる民主的プロセスでもあります。
みらい株式会社では、自治体の財政情報公開支援、ビジュアル設計、対話型説明会の設計運営などを通じて、「伝わる」自治をサポートしています。
見えることで、わかる。
わかることで、動ける。
そして、動くことで、まちは変わる。