■ はじめに
「住民に情報が届かない」「政策の意図が誤解される」──こうした声は全国の自治体で共通する課題です。
広報紙やホームページ、SNSなど手段は増えてきましたが、「発信しているのに伝わらない」状況が続いています。
本稿では、自治体広報が直面する課題と、その改革に必要な視点を整理し、“つながる広報”の可能性を探ります。
■ 情報は「出せば届く」時代ではない
◯ 情報過多と注意力の分散
スマートフォンやSNSの普及により、住民は日々膨大な情報にさらされています。
「そもそも見られていない」「読まれても理解されない」──それが現実です。
◯ 信頼性・共感性が鍵
いま必要なのは、“正確な情報”だけではありません。**「自分ごととして感じられるか」「信頼できるか」**が重要な評価軸となっています。
■ 自治体広報が抱える主な課題
・一方通行の発信
→「お知らせ」「通達」にとどまり、住民との双方向性がない。
・行政用語の多用
→読み手の視点より、内部文書の延長線にある表現が多い。
・ターゲットの不明確さ
→「全住民に伝える」姿勢で、結局誰にも響かない。
・更新の属人化・形式化
→担当者依存の運用で、継続性・改善性が乏しい。
■ 改革の方向性:3つの“つ”
① 「つたえる」から「つたわる」へ
専門用語はかみ砕いて
図・写真・動画を活用し、視覚的に理解できる工夫を
タイトルや見出しを「読みたくなる言葉」に
② 「つたわる」から「つながる」へ
SNSやLINE公式などを活用したリアルタイム対話型の発信
コメント機能・アンケート・対話イベントによる双方向性の導入
③ 「つながる」から「動きを生む」へ
「行政が何をしたか」より、「住民がどう動けるか」を明示
例:「○月○日までに申請が必要」「●●イベントに申し込みを」など、行動喚起型の情報設計
■ 成功事例の一例
◎宮崎県新富町
住民・職員・民間事業者が参加する「情報発信研究会」を設置
「誰に届けたいか」「どうしたら届くか」を議論しながら、SNS活用や動画制作に取り組んでいる
結果として、広報が“町の魅力を伝えるツール”から“地域を巻き込む対話の起点”に変化した
■ おわりに
広報は、政策の「お知らせ」ではなく、地域を動かすエンジンです。
その力を最大限に引き出すには、行政自身が“伝えたいこと”だけでなく、“住民が知りたいこと”に耳を傾けることが必要です。
みらい株式会社では、自治体の広報設計支援や職員向けの広報研修、住民参加型の広報体制構築まで、「つながる広報」への転換をお手伝いしています。
伝える先に、対話があり、共感があり、行動がある。
自治体広報の真価が、今まさに問われています。