■ はじめに
少子高齢化、都市部への人口流出、物価上昇──これらの影響により、地域の商店街や中小事業者は大きな打撃を受けています。
一方で、NPOや社会福祉法人、地域住民団体などによる**「非営利的経済活動」が静かに存在感を増しており、“もうひとつの地域経済圏”**として注目されています。
本稿では、統計データと事例をもとに、地域経済の疲弊と非営利市場の可能性を考察します。
■ データで見る「地域経済の疲弊」
◯ 地方消費の縮小傾向
総務省「家計調査(2023年)」では、地方都市における食料品・教育費の実質支出が大きく減少
特に70歳以上の高齢世帯では、「医療・介護」以外の消費が顕著に落ち込む
◯ 地元商業の衰退
中小企業庁「商業実態基本調査」によると、10年間で全国の小売業店舗数は約20%減少
特に半径1km圏内にスーパーがない“買い物難民地域”は1万地区を超える
■ 非営利セクターの拡大と特徴
◯ NPO法人数・活動規模は年々拡大
内閣府の統計では、NPO法人の登録数は全国で約50,000法人(2024年時点)
特に「子ども食堂」「地域交通支援」「居場所づくり」などが近年急増
◯ 非営利≠無償・非市場
NPOや一般社団法人などは、補助金だけでなく有料サービス・自主事業による経済循環を生み出している
例:訪問介護を担うNPO、農産品の加工販売を行う障がい者就労支援事業所など
■ なぜ非営利市場が地域に必要なのか?
【社会的ニーズ】 【公共・民間の限界】 【非営利が果たす役割】
高齢者の見守り 自治体職員が不足 地域住民主体の支え合い活動
子育て支援 保育施設の定員制限 子ども食堂・学習支援団体の柔軟な対応
移動手段 公共交通の撤退 地域運営のデマンド交通、福祉車両活用
■ 注目事例:地域に根差した“新しい経済”
◎ 山口県宇部市「うべ子ども食堂ネットワーク」
NPOと企業、自治体、民生委員が連携し、食・学習・生活相談を一体化
子育て世帯を支えると同時に、地域経済(弁当業者、地元商店)とも連動
◎ 三重県松阪市「まちの保健室プロジェクト」
医療専門職・住民・商店街が連携し、高齢者の買い物・健康支援を定期開催
地域内で“人の手と場所”を経済循環化し、ボランティア×有償サービスの中間モデルを実現
■ 今後の可能性と課題
◯ 自治体は「委託」から「連携」へ
補助金頼みの単発委託ではなく、非営利組織を“地域づくりの一員”として位置づける関係性が必要
◯ 財源多様化と持続モデルの設計
寄付・助成金・共助保険・事業収益など複線的な運営基盤を設計し、短期依存を回避
◯ 人材確保と信頼性の担保
“やりがい搾取”を避け、専門性に応じた報酬設計・スキル評価制度の導入を支援
■ おわりに
地域が抱える複雑な課題に対して、行政でも民間でもない“第3の担い手”としての非営利セクターが果たす役割はますます大きくなっています。
みらい株式会社では、非営利団体と自治体・企業との連携設計、支援制度の見直し、持続可能な地域経済モデルの提案を通じて、地域の“多様な経済圏”の形成を後押ししています。
支え合いが価値を生み、価値が地域に残る。
それが、地域再生のもうひとつのエンジンです。