コラム・レポート

コラム
2025-08-20

地域から始まるウェルビーイング 〜“経済”だけで測れない、まちの幸せとは?〜

■ はじめに

「ウェルビーイング(Well-being)」──近年、自治体政策や企業経営において注目されるこの言葉は、「幸福」「心身の健康」「社会的なつながり」などを包括する概念です。
特に地方においては、単に所得や雇用を増やすだけでは語りきれない、“暮らしの質”が問われる時代になってきました。
本稿では、「地域のウェルビーイング」とは何か、そしてそれをどう高めていくかを考えます。


■ なぜ今、ウェルビーイングなのか?

◯ 経済成長=幸福ではない
人口減少や高齢化が進む中、「成長」や「効率性」ではなく、「暮らしの満足度」や「つながりのある社会」に価値を置く流れが強まっています。

◯ 都市集中の限界と、地方の可能性
都市部での孤独死、働きすぎ、分断──こうした課題に対して、“顔の見える関係性”“ゆるやかなつながり”を持つ地域社会が持つ意味が、改めて見直されています。


■ 地域ウェルビーイングを構成する5つの視点

身体の健康
 例:徒歩圏で医療や運動機会がある、自然の中で過ごせる

心の健康(心理的安全性)
 例:自分らしくいられる場所がある、相談できる相手がいる

経済的安定
 例:地元で安定的に働ける、必要な生活コストを賄える

社会的つながり
 例:地域活動に参加できる、世代や立場を超えた交流がある

自己実現・意味のある暮らし
 例:自分の得意や経験を地域で活かせる、感謝される実感がある

これらは自治体の政策設計や地域ビジネスの着眼点として、重要なヒントとなります。


■ 取り組みの例:数値では測れない“幸せづくり”

岐阜県飛騨市では、地域通貨や対話の場づくりを通じて、住民の自己肯定感や地域貢献意欲が向上

長野県小布施町では、「対話と参加」を軸にしたまちづくりを展開し、住民の幸福度を可視化する指標も導入

こうした取り組みは、「予算の大きさ」や「制度の数」ではなく、人と人、人と地域の関係性の質に重点を置いています。


■ 自治体・企業・市民それぞれが担い手に

ウェルビーイングは“福祉政策”や“行政の仕事”だけではありません。
企業は働き方や地域貢献のあり方を、住民は自分の人生の充実度を、行政は支援と接続のインフラを。

それぞれが役割を果たし合うことで、地域全体としての幸福度が高まっていきます。


■ おわりに

みらい株式会社では、地域DXや人材支援を超えて、「幸せな地域をつくる」ための計画づくりやプロジェクト支援を行っています。
「何のためにこの政策をやるのか?」「それは住民の幸せにどうつながるのか?」という原点に立ち返ることが、これからの地域政策の羅針盤となるはずです。

ウェルビーイング──それは、外から測るものではなく、**内から感じられる“まちのぬくもり”**そのもの。
地域に根差した幸せづくりの旅は、もう始まっています。

【投稿者】

妹尾 暁​

妹尾 暁​

みらい株式会社 代表取締役

一般社団法人Smart Citizen Hub代表理事, 熊本県チーフ・デジタル・オフィサー(CDO), 天草市DX推進アドバイザー, 熊本保健科学大学経営アドバイザー

専門分野は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、BPR(業務改革)、AI・IoT、経営戦略、事業企画、新規事業開発、教育・人材育成、プロジェクトマネジメント、マーケティング、組織設計など多岐にわたる。 最近の趣味は、メダカの飼育と旧車いじり。