■ はじめに
日本の地域経済を支えてきた中小企業。しかし、今その根幹が静かに崩れつつあります。
その最大の要因が、経営者の高齢化と事業承継の遅れです。
帝国データバンクや中小企業庁の調査をもとに、地域別の実態と、打開に向けた方策を探ります。
■ 統計が示す「承継危機」の実態
◯ 経営者の平均年齢は過去最高を更新
帝国データバンク「全国社長年齢分析(2024年)」によると、中小企業の経営者の平均年齢は63.4歳と過去最高
**60歳以上の経営者が全体の67.5%**を占める
◯ “後継者未定”の企業が過半数
中小企業庁によると、全国の中小企業の約半数(127万社超)で後継者が不在または未定
特に地方部では、**人口流出・産業魅力度の低さから「継がせたくない」「継ぎたくない」**が深刻
■ 地域別傾向と“承継格差”
【地域】 【後継者不在率】 【特徴】
東北地方 約65% 農林業・建設業などで特に高齢化が顕著
四国地方 約63% 小規模・個人経営型が多く、承継モデルが成立しにくい
首都圏 約45% M&A・外部承継など多様な手段が徐々に広がる傾向
※全国平均:約52%
■ 承継が進まない背景要因
・「承継=身内」が前提の価値観
→ 血縁承継にこだわる企業が多く、外部登用やM&Aが選択肢になりづらい
・経営者の“引退しづらさ”
→ 地域での影響力、従業員への責任感、資金調達不安などが足かせに
・情報・相談体制の不足
→ 商工会や金融機関でも、承継を専門とする人材や制度説明が不十分
■ 先進的な取り組み事例
◎ 山梨県「事業承継推進プラットフォーム」
県・商工会議所・金融機関が連携し、専門家による伴走支援+後継者マッチングを実施
2023年度はマッチング成功率が前年比1.6倍に
◎ 大分県由布市「おおいた事業承継ネットワーク」
M&A支援事業者と連携し、“第三者承継”を前提とした支援制度を展開
「個人商店でも承継できる」社会的意識の変化が地域全体に波及
■ 解決に向けた処方箋
【アプローチ】 【具体策】
承継人材の発掘 地域おこし協力隊OB、関係人口、副業人材の活用
承継を前提としたDX支援 見える化・マニュアル化で属人化を解消し、承継しやすい体制へ
事業者への心理的ハードル低減 “相談=売却”という誤解を払拭し、「選択肢の提示」に重点
■ おわりに
中小企業の承継問題は、単なる経営者個人の問題ではなく、地域に根づく雇用・文化・技術の継承に直結する社会的課題です。
みらい株式会社では、地域金融機関・商工会議所・自治体と連携し、「継がせたい人」と「継ぎたい人」をつなぐ仕組みの構築支援を行っています。
“あと5年頑張る”の先に、誰かが待っている仕組みを。
その設計が、地域経済の未来を左右します。