コラム・レポート

コラム
2025-10-20

「地方企業×リスキリング」〜“学び直し”が企業を変え、地域経済を変える〜

■ はじめに
日本全体でリスキリング(学び直し)が注目を集めていますが、地方企業にとってこそ、この波を逃さないことが持続可能な経営の鍵となります。
政府も“リスキリング支援に5年間で1兆円”を打ち出すなど、構造的な人材難に対応すべく動き出しています。【※1】
しかし都市部中心の議論が多く、地方での実装はまだこれから。
今回は、「地方企業×リスキリング」がなぜ重要なのか、どう進めればよいのかを考えます。


■ 地方企業の人材課題の構造
地方では次のような課題が慢性化しています:
• 人手不足の慢性化
 求人倍率は都市部よりも高い傾向が続き、特に製造・建設・介護系で深刻化。
• 新卒採用の困難さ
 地域外への若者流出が続く中、採用競争力を持てない企業も多い。
• 中堅層のスキルギャップ
 DXや業務改善への対応が求められる中、既存社員に“学び直し”の機会が少ない。


■ なぜリスキリングが必要か?
リスキリングとは単なる“研修”ではなく、『業務内容そのものが変わる中での「生産性の再設計」』です。

地方企業がリスキリングで得られる主な効果:
• 業務の属人化・アナログ作業からの脱却
• 若手社員が定着しやすくなる“成長実感”の提供
• 中堅層のモチベーションと生産性の向上
• 業務DX化への布石(Power Automate、kintone、AI等)
また、地域に根差した事業こそ、住民・顧客ニーズの変化に合わせて柔軟に変化する力が求められており、リスキリングはその土台となります。

■ どう進める?地方企業における実装ステップ
1. 経営層による「学び直しは必要」というメッセージ発信
 例:「全社員対象のChatGPT講座」「業務日報DX研修」など
2. 自治体・支援機関との連携
 ハローワーク、地域ジョブセンター、商工会議所と連携し、研修機会や助成金を活用。
3. 副業人材や外部講師を“スキル伝達者”として活用
 例:都市部からの副業人材が月1訪問、Slackで質問対応など。
4. 実務と直結した内容から始める
 「日報を自動化」「売上データを見える化」「定型業務の自動化」など、日常業務で成果が見えるテーマから始める。


■ おわりに
リスキリングは都市部だけのものではありません。
むしろ、変化する余地が大きい地方こそ、大きな可能性を秘めています。
みらい株式会社では、地域企業のニーズに合わせたオーダーメイド型リスキリング支援(研修設計・講師派遣・伴走支援など)を提供しています。
中小企業や自治体との連携で、地域人材の「新しい価値創造力」を育むお手伝いをしています。

■ 出典・参考
• 【※1】経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
 https://www.meti.go.jp/policy/reskilling/
• 総務省「地域における人材確保・定着策に関する調査」2023年
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000883206.pdf
• 厚生労働省「中小企業の人材育成支援メニュー」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jinzai/index.html
• パーソル総研「リスキリングと地方企業の実態調査2023」

【投稿者】

妹尾 暁​

妹尾 暁​

みらい株式会社 代表取締役

一般社団法人Smart Citizen Hub代表理事, 熊本県チーフ・デジタル・オフィサー(CDO), 天草市DX推進アドバイザー, 熊本保健科学大学経営アドバイザー

専門分野は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、BPR(業務改革)、AI・IoT、経営戦略、事業企画、新規事業開発、教育・人材育成、プロジェクトマネジメント、マーケティング、組織設計など多岐にわたる。 最近の趣味は、メダカの飼育と旧車いじり。