コラム・レポート

コラム
2025-09-02

人材不足時代の自治体運営 〜危機を変革のチャンスと捉えて担い手なき現場に光を当てる〜

■ はじめに

少子高齢化と人口減少が進む中、自治体運営の最大の課題の一つが「人材不足」です。
行政サービスの多様化、業務の複雑化、そしてDXなどの新たな課題対応が求められる中で、限られた人数でこれらを担うのはもはや“綱渡り”状態とも言えます。
本稿では、自治体における人材不足の現状と、その打開策について考えます。


■ 担い手不足のリアル

◯ 正職員減、業務増加のジレンマ
多くの自治体で職員数は抑制される一方、業務は年々複雑化しています。
防災、子育て、福祉、観光振興、企業誘致、情報発信──地域のニーズに応えようとするほど業務は増える一方で、「人が足りない」「育つ時間がない」という悲鳴が現場から聞こえてきます。

◯ 離職と採用難の二重苦
若手職員の流出や、そもそも公務員志望者の減少も深刻です。
とくに中山間地域や小規模自治体では、都市部との人材獲得競争において不利な立場に置かれがちです。


■ 求められる打開策

① 外部人材の登用と活用
地域おこし協力隊、デジタル専門員、民間企業からの出向など、“外の力”を取り込む動きが広がっています。
単なる「手足」としてではなく、課題解決型のプロジェクト単位で人材を登用することがカギとなります。

② 内部人材の多能工化とOJT強化
職員一人ひとりが複数の業務に対応できる体制づくりも重要です。
とはいえ「育成の余裕がない」という声も多く、外部の研修機会の活用や、OJT設計支援などが欠かせません。

③ BPRとDXによる業務負荷の削減
人手不足を“根性”で乗り切るのではなく、業務そのものの見直し(BPR)やDX化によって仕事のやり方を変える。
これにより、限られた人材でも十分に成果が出せる体制へと転換できます。


■ 人材不足=可能性の出発点

人材が足りないからこそ、「本当に必要な仕事は何か」「誰とどう連携するか」を見直す機会にもなります。
自治体運営の本質は、“全部を自前で抱え込むこと”ではなく、“地域全体で支え合う仕組みを築くこと”です。

■ おわりに

人材不足は自治体にとって危機であると同時に、変革のチャンスでもあります。
外部の知見と連携しながら、小さくても持続可能な地域経営を目指す時代に来ています。
私たちみらい株式会社も、地域に寄り添い、現場の声を活かした人材戦略を共に描いていきます。

【投稿者】

妹尾 暁​

妹尾 暁​

みらい株式会社 代表取締役

一般社団法人Smart Citizen Hub代表理事, 熊本県チーフ・デジタル・オフィサー(CDO), 天草市DX推進アドバイザー, 熊本保健科学大学経営アドバイザー

専門分野は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、BPR(業務改革)、AI・IoT、経営戦略、事業企画、新規事業開発、教育・人材育成、プロジェクトマネジメント、マーケティング、組織設計など多岐にわたる。 最近の趣味は、メダカの飼育と旧車いじり。