コラム・レポート

レポート
2025-07-16

人口減少“2030年問題”の足音 ― 若年層転出超過に見る構造的課題と処方箋 ―

■ はじめに

2024年現在、日本の総人口は1億2,400万人を割り、今後さらに減少が加速することが確実視されています。
特に2030年には、戦後の「団塊ジュニア世代」が50代後半に差しかかり、働き手の中核層の縮小と地域社会の高齢化の加速が同時進行する構造的危機、「2030年問題」が顕在化すると言われています。

■ 統計が示す“地方の現実”
◯ 地方の若年層流出は深刻化

総務省「住民基本台帳人口移動報告(2023年)」によると、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)への転入超過は104,000人超と前年より増加。
特に20代の転出超過は、秋田・青森・高知・島根など全都道府県で続いており、地方圏の若者離れが止まらない状況です。

◯ 2040年には1,800自治体が「消滅可能性」

内閣府や増田レポート(2014年)では、2040年までに全国の約半数の自治体が存続の危機にあると指摘。
その最大要因は「若年女性(20〜39歳)」の継続的な都市部流出にあります。

■ 原因は“雇用”と“教育”と“選択肢の欠如”

地域に“働く理由”がない
 → 地場産業の成長停滞、都市部への本社一極集中、職種の偏りにより、若年層の定着が難航。

学び直しやスキルアップの機会が乏しい
 → 地方ではキャリア支援や研修機会が限定され、Uターン後の成長機会が見えづらい。

暮らしやすさより“面白さ”が足りない
 → 交通の不便さや文化・娯楽の不足が、若者の“暮らす意志”を弱めている。

■ 解決に向けた4つの視点
① キャリア創出型の企業誘致

地域に根ざしたベンチャーやリモートワーク型の企業誘致を行い、**「地元で面白い仕事がある」**状態をつくる。

② 教育・人材支援の再設計

高卒・大卒だけでなく、地域内での学び直し(リスキリング)支援や副業支援を充実させ、多様な働き方を可能に。

③ 「選ばれる暮らし」のデザイン

空間・交通・文化・交流の質を高め、単なる住環境整備ではなく、“豊かな生活”としての地方像を提示。

④ 関係人口から定住へつなぐ仕組み

「ときどき関わる」「仕事だけ地方で」から始めて、段階的な移住・定着を促進する支援モデルの構築。

■ おわりに

2030年以降を見据えると、人口減少は“避けられない未来”ではありますが、“備えられる未来”でもあります。
みらい株式会社では、地域の若者流出抑制やUターン支援、リスキリング設計、自治体の未来ビジョンづくりを通じて、「選ばれる地域」づくりを支援しています。

人口減少を“危機”から“変革のチャンス”へ──。
2030年に向けて、今こそ地域のあり方を問い直すタイミングです。

【投稿者】

妹尾 暁​

妹尾 暁​

みらい株式会社 代表取締役

一般社団法人Smart Citizen Hub代表理事, 熊本県チーフ・デジタル・オフィサー(CDO), 天草市DX推進アドバイザー, 熊本保健科学大学経営アドバイザー

専門分野は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、BPR(業務改革)、AI・IoT、経営戦略、事業企画、新規事業開発、教育・人材育成、プロジェクトマネジメント、マーケティング、組織設計など多岐にわたる。 最近の趣味は、メダカの飼育と旧車いじり。